白鳳新薬株式会社 代表取締役 坂本慧太さん
日本M&Aセンターグループ出身のOB・OGに現在を聞くコーナー、「OB、OG 今何してる?」。第1回は、2019年から約3年半、日本M&Aセンター金融法人部での活躍を経て、2023年4月、健康食品のOEM製造・販売を行う会社を設立された白鳳新薬 代表取締役 坂本慧太さん。ご親族が創業100年を超える歴史のある製薬会社を経営されているということもあり、そのネットワークも活用しながら、経営者として奮闘されている様子を伺いました。
—久しぶりに日本M&Aセンターに来られた感想はどうですか?
こういった形でこの会議室にいることを全く想像していなかったので、とても不思議な気分です。笑 今は健康食品のOEM製造・販売の会社を設立し、主力事業としてNMNのサプリメントを作っています。退社後も応援してくださる人がたくさんいて、事業や商品のことをお伝えしたり、近況を情報交換したりと頻繁に交流させていただいています。本当にありがたい限りです。
—NMNとはどんなものですか?
NMNは、『ニコチンアミドモノヌクレオチド』という若返り効果があるとされているビタミンBの一種で、食物にはごく微量しか含まれていないので、サプリメントや点滴で摂取されています。ヒトの体内に入ると、サーチュイン(長寿遺伝子)を活性化させることが研究で判明していて、老化を遅らせ健康寿命を延ばす可能性のある物質として注目されています。非常に人気がありますが、原料がとても高価なんです。価格に加えて、商品によっては配合量や品質にばらつきがあり、せっかく良い成分なのに、お客様からすると選ぶのが難しい。そこで当社が、親族が経営する製薬会社の仕入力や生産力をフルに活用させてもらい、品質の高いNMNサプリメントを通常よりも安価な値段で作っています。
—ご親族の会社は非常に歴史のある会社だそうですね。
伯父と従兄が代表をつとめる白鳥製薬という100年以上の歴史ある会社です。創業時は千葉県で精米業を営んでいました。当時は第一次世界大戦の最中で、カフェインの輸入量が減り不足していた時代。日本で初めて、カフェインを茶葉から抽出することに成功し、精米業から製薬業に変わって行きました。その後事業を拡大し、現在は医薬品の原薬製造を中心に、有機化合物の製造や健康食品製造なども行っています。
—坂本さんが会社を設立した経緯は?
日本M&Aセンター時代、さまざまな業界の経営者とお仕事をさせていただく中で、多くの経営者が非常にパワフルに働かれているのですが、自身の健康を気にかけながらも、あまり対策などはされていない姿を目の当たりにしました。その理由の多くが、薬やサプリメントなどは、情報や噂話が多く、何を選べばいいかわからないから。そこで、老舗企業・白鳥製薬の強みをフル活用しながら、周りの人に進んで勧めたくなる本当に良い商品を適正価格で届けたい、という思いで起業しました。白鳥製薬と資本関係があるわけではないので、”協力会社”という位置づけになります。
将来的には小売も強化したいですが、まずはOEM製造・販売の会社として、クリニックやサロン向けの卸業をメインに行っています。まさに先程も1件クリニックに訪問してきたのですが、美肌、滋養強壮、睡眠の質改善など、サプリメントに対する多様なニーズをいただきました。それらのニーズから、新たに商品を企画し、販売しています。研究や製造の体制が整っており、医薬品の原料である“原薬”を扱っている白鳥製薬と協力し合える関係だからこそ可能な事業ですね。
もともと30歳になる前に会社を立ち上げたいと思っていたので、その夢が叶ってよかったです。とはいえまだスタート地点なので、戦略をしっかり立て、会社を早く軌道に乗せたいです。
実は福岡事務所もあるのですが、日本M&Aセンター時代に出会い、M&Aのお手伝いをさせていただいた譲受け企業の社長が、「ここを使って」と言ってくださって実現しました。そうやって支援していただけるのは非常に嬉しいです。
—日本M&Aセンターでの経験で役に立っていることはありますか?
日本M&Aセンターには、26歳の時にメガバンクを経て入社しました。主に大手証券会社からご紹介いただいたお客様のM&Aの仲介業務を担当していて、古巣のメガバンクとの提携部署立ち上げにも関わらせていただきました。大槻昌彦常務や三上隆史部長をはじめとした多くの先輩方からたくさんのことを教わり、心から感謝しています。
入社時は、M&Aで後継者不在に困っている会社の力になろうと単純に考えていましたが、働いていく中で、お客様にとってM&Aをするという決断は「ただ後継者不在の解決策だから」ではないと実感しました。そんな中で常に意識していたのは、事業承継問題を解決するにとどまらない、譲渡企業、譲受け企業の双方の事業がさらに発展する可能性のあるプラスアルファの提案を考え抜くことでした。そのため、譲渡企業や譲受け企業の現場に赴き、双方の強みや課題感など可能な限り深く理解し、自分なりの仮説を持って経営者と話をさせていただき、仮説を修正しながら提案することを繰り返していました。
汎用的な資料を持っていくのではなくて、「このお客様はこういう強みとこういった課題をお持ちだ」という仮説を立て、「こう解決しましょう」と資料に落とし込んでいくのは、日本M&Aセンター時代に教えていただき、身につけました。それによってお客様からの信頼を得られ、お客様の課題解決のきっかけ作りをできた成功体験を、今のサプリメントの提案でも生かすように意識しています。
—今後についてはどうお考えですか。
ファーストステップとして、まずは事業を軌道に乗せ、初年度年商1億円を目指しています。ゆくゆくは、お客様一人一人にとって最も効果のあるサプリメントを提案できるような仕組みを作るための構想を練っています。もちろんM&Aにも挑戦してみたいと思っていて、さっそくバトンズに登録し、トップ面談に臨みましたが、残念ながら競合し、意向表明で選ばれず…。やはり譲渡オーナーからするとしっかりした会社の方がいいと思うので、もっと頑張らなくてはと気持ちを新たにしました。M&Aで譲受けができる規模の会社にし、しっかりシナジーを生み出せるようにしたいですね。
—日本M&Aセンターとしても、卒業生の活躍は非常にうれしいです。これからも頑張ってください。ありがとうございました。
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