• M&A
  • 【家族会議の現場から】家族会議サポートはライフワーク。長年の経験が生かせるやりがいのある仕事です

【家族会議の現場から】家族会議サポートはライフワーク。長年の経験が生かせるやりがいのある仕事です

【家族会議の現場から】家族会議サポートはライフワーク。長年の経験が生かせるやりがいのある仕事です

事業承継・M&Aに携わって30年超。日本M&Aセンター 事業承継エグゼクティブアドバイザー 長坂 道広さんにこれまで多くの経営者とその家族の決断に寄り添ってきた経験や想いを聞きました。

 

※本記事は、2025年3月末発行の日本M&Aセンター広報誌「MAVITA」VOL.5からの転載です。

「MAVITA」をご覧になりたい方はこちら

最初から家族と話し合えば葛藤を和らげられる

―家族会議にどのような想いで立ち会っていらっしゃいますか

「参加者全員が幸せになってほしい」という想いにつきますね。10年後、20年後の未来を見据えて、どうすれば全員が幸せになるか、そして会社が成長できるかの全体最適を考えています。私はM&Aの専門家という武器を持っていますが、家族会議の場では話を引き出すことに徹し、自分の中に結論は持たないようにしています。事業承継・M&Aの仕事を始めたのは30歳の時ですが、今では60歳を超え、相談を受ける経営者の年齢に近づいたおかげでより気持ちを理解できるようになったと思います。

―家族会議を開いた家族からの反応は。

いい機会になったと感謝されることが多いです。長年胸につかえたものを話された経営者、はじめて会社への想いを聞いた家族の顔は、心なしかすっきりしているようにも見えます。お子様から「お父さんのことを深く理解できた」という声が聞かれることも。家族であっても、機会を作らなければ会社の事業や歴史、事業承継への考えについてしっかり話し合うことはそうそうないということなのでしょうね。

―なぜ家族会議の開催をすすめるようになったのでしょうか。

M&Aの仕事を始めたころは経営者だけと面談していましたが、経験を積む中で家族も含めてしっかり話し合うことも重要だと感じるようになりました。ある経営者は、奥様が面談にも参加し、相談しながらM&Aを進めたことで不安が少なかったと話していました。また、別の経営者にはM&Aから1年後に自身の経験をセミナーで話してもらったのですが、その際に初めてその想いを理解した家族が涙を浮かべている姿を目にしました。こうした経験からそれであれば最初から家族と話し合い、相談しながら承継方法を決めたり、M&Aを決断したりできれば、経営者も家族もどれだけ不安や葛藤を和らげることができるのかと思ったのです。

M&Aという大きな決断は家族の理解が大事

―M&Aは「経営者一人で進めるべき」という考え方もありませんか。

M&Aは情報漏洩のリスクからできるだけ人に話すべきではないとされています。その考え方にはもちろん賛同しますが、M&Aを決断する前段階で家族と会社の今後や承継について考えるのも悪くないと思います。
未来に決定事項はありませんから、どんな決断をしたとしても不安になって当然です。そんな時に家族からの理解やサポートがあれば、気持ちが救われることもあると思うんです。
それに、M&Aで会社を譲渡した後は家族との時間が増えます。M&Aに至った背景や経緯、想いの部分を家族がしっかり理解してくれているほうが、はるかにM&A後の家での居心地もよくなるはずです(笑)

―これから家族会議を開いてみようと考える経営者の皆様へアドバイスをお願いします。

家族同士で会社の未来について話をしてみることで、必ず何か新しい気づきがあります。意思決定のための材料を集める機会ととらえて、まずは会社のことを知ってもらい、お互いの考えを共有することから始めたらいいと思います。
初回のハードルは高いですが土台ができればコミュニケーションは格段に取りやすくなります。私がファシリテーターとして初回に同席し、その後は家族だけで定期的に話をしたという事例もあります。会社のこと、家族の考え、事業承継のすべての選択肢を知り尽くしたうえで、ベストな結論を出していただくことを願っています。


家族会議ってどんなもの!?家族会議にまつわるQ&A

Q 家族会議はいつ開くべきでしょうか?

A いつまでに事業承継をしようと経営者の頭の中で考えていても、そこから逆算して家族会議を開くのは難しいもの。「万が一」もありますから、まだ早いとは思わずに意識的に機会を持つことをおすすめします。子どもの人生を中心に考えて、進学や就職に際して会社の話をしてみるのもよいタイミングといえるでしょう。何も話をしないで3年過ぎれば、自分も子どもも自動的にその分年を取り、それぞれの環境も大きく変化します。

Q どれぐらいの時間が必要ですか?

A 1回につき2〜3時間を確保しておくとしっかり話ができるでしょう。

Q 家族会議のゴールはどこですか?

A 第三者にファシリテーターとして入ってもらうのも手です。客観的に話を広げてもらえますし、第三者がいることで家族も冷静に話ができるでしょう。金融機関の担当者、顧問税理士・会計事務所の先生、M&A仲介会社の担当者など、会社と家族の状況をよく知っている方に頼むのがおすすめです。そしていきなり各論に入るより、まずは事業承継の方法についての知識の共有から始めるのがスムーズでしょう。


プロフィール
日本M&Aセンター 事業承継エグゼクティブアドバイザー
ネクストナビ 取締役
青山財産ネットワークス 取締役
長坂 道広(ながさか・みちひろ)

事業承継に30年超携わり、M&A仲介を多数経験。関係者が納得できるM&A以外の承継手法も提供できるよう、日本M&Aセンターと青山財産ネットワークスの協力により事業承継ナビゲーター(現:ネクストナビ)を設立、初代代表取締役副社長に就任。現在も事業承継に悩む現役の経営者向けに幅広くコンサルティングを行っている。

新着記事

オススメ記事