(左から)日本M&Aセンター 営業支援部 営業支援課 阿部 礼奈さん、堀江 麻由さん
M&Aの成約にあたって全国各地で開催される「M&A成約式」。その準備から当日の運営までのプロデュースを担う「M&Aセレモニスト」は、日本M&Aセンターならではの仕事です。今回はM&Aセレモニストとして4年目の日本M&Aセンター 営業支援部 営業支援課 阿部 礼奈さん、堀江 麻由さんのお二人に、仕事のやりがいや想いを聞きました。
―まずは「M&Aセレモニスト」がどんな仕事か教えていただけますでしょうか。
阿部さん:他社の方だと聞きなれない職種だと思います。日本M&Aセンターでは、2015年より譲渡企業と譲受け企業がお互いの企業文化を理解し、これから共に新たな一歩を踏み出す日に行うセレモニーとして「M&A成約式」を執り行っています。M&Aは結婚にたとえられることがありますが、成約式は門出を祝う結婚式のような位置づけです。私たちM&Aセレモニストは、成約式の準備から当日の運営までをプロデュースする役割を担っています。
堀江さん:現在、東京本社・西日本支社に9名 のM&Aセレモニストが所属しており、前職は航空業界やウェディング業界などで接客経験を持つメンバーがほとんどです。2024年度は4~12月までの期間で300件超の成約式を実施し、実施率は全成約件数の約80%にのぼります。繁忙期にはひとりあたり月10件程度を担当して全国を飛び回っています!
―準備から当日までの流れはどのような感じなのでしょうか。
堀江さん:基本的には、ひとりのM&Aセレモニストが準備から当日の立ち合いまで一貫して担当します。担当コンサルタントから成約式開催の連絡をもらうのは早くても1カ月前、だいたいは2週間前ぐらいで、そこから会場手配や式次第作成など具体的な準備を急ピッチで進めていきます。
阿部さん:当日は私たちが先に会場入りし、準備を万全にしてお客様をお迎えします。会場となるのは、ホテルの宴会場や当社の成約式ルームが多いですが、提携先の会議室や、結婚式場のチャペル、ご自宅、なじみの飲食店など、どんな場所でも対応しています。
―演出はM&Aセレモニストのアイディアが採用されることが多いのでしょうか。
堀江さん:そうですね。準備期間が限られているので、担当コンサルタントと綿密な打ち合わせをするケースはほとんどなく、式の演出などは私たちに委ねていただく部分がかなり大きいです。ある程度の「型」は決まっていますが、会場の装飾の程度や手紙朗読や花束贈呈といったサプライズの有無などは、お客様のニーズに合わせて1件1件オーダーメイドで対応しています。私たちから担当コンサルタントに演出を積極的に提案して、採用いただいたアイディアをベースにオリジナルの式を作り上げていきます。
阿部さん:私たちは当日を迎えるまでお客様にお会いする機会がなく、時間も限られているので、大事なのは「想像力」を働かせることです。担当コンサルタントにヒヤリングをしたり、これまでの商談の記録や両社のHPなどを細かく確認したりして、M&Aに至った背景やお客様のお人柄、企業の特徴などを把握するところからスタートします。
演出のアイディアの引き出しはM&Aセレモニストによってさまざまです。私の場合はInstagramでウェディング情報のアカウントをチェックするなど、プライベートで見聞きした情報が仕事のヒントになることも多くあると感じています。
堀江さん:M&Aセレモニスト同士で情報交換するのはもちろんのこと、当社の社内報では「Best of 成約式」という定例コーナーを設けてもらい、演出にこだわった成約式を社員に向けても発信しています。特に阿部さんとは、同じ西日本支社で入社月も1カ月違いということもあり、よく相談し合っています。
―印象に残っている成約式を教えてください。
堀江さん:たくさんありますが、やはり初めて担当させていただいた成約式は強く印象に残っています。牛乳を扱う会社ということで、牛柄のテーブルクロスを敷いたり乾杯も牛乳瓶にしたりと、企業の色を全面に押し出しました。成約式の運営は初めてながらも、自分のアイディアをM&Aセレモニストの先輩方や担当コンサルタントも聞き入れていただき、さらによりよくなるような助言ももらい「こんなに自由に自分で考えて、どんどん提案していいんだ!」とうれしく思ったのをよく覚えています。
阿部さん:私も最初に担当させていただいた成約式はよく覚えています。私は初めて担当したのがケーキ屋さんの案件でした。成約式では、私と同世代の娘さんと息子さんが経営者であるご両親へサプライズでお手紙を読まれたのですが、まっすぐに両親への感謝や尊敬の気持ちを伝えていらっしゃって、同世代で、両親への想いに共感することも多く、とても感動したんです。「まるで結婚式みたいだね」とお客様におっしゃっていただくことも多いですが、成約式という特別な機会だからこそ、普段は恥ずかしくて言えない想いも伝えられるのだと、とても温かい気持ちになったのを覚えています。
堀江さん:阿部さんのおっしゃるように、成約式では人と人の心が通じ合う場面に私たちも思わずもらい泣きをしてしまいそうになることもすごく多いんです。ある案件では、担当コンサルタントがお客様よりも大号泣したこともあって、そのときは思わず私ももらい泣きしながら写真をたくさん撮りました(笑)その姿をほほえましく思ったのと同時に、担当コンサルタントのあふれだすほどの熱い想いや、成約に至るまで毎日真摯にお客様と向き合ってきたことを感じました。
阿部さん:あとは、成約式が「社長の背中を押す機会」になることもあります。フラワーデザインを手掛ける会社を担当した際には、社長が最後の最後までM&Aに悩んでいらっしゃったことを伺い、会場をご両社のお花や、風船を使って装飾し、これまでのご両社の面談や店舗見学のお写真で会場をいっぱいにしました。「成約式日=新しいスタートの日」になればという想いで、担当コンサルタントと協力して準備を進めました。
当日はお客様にもとても喜んでいただけましたし、なにより成約式が「M&Aをしてよかった」と思っていただける要素のひとつになれたのがうれしかったです。「だれかを幸せにしたい」という想いで頑張れるM&Aセレモニストという仕事はとても素敵だと感じました。
―そうした経験がやりがいにつながるのですね。
阿部さん:はい。仕事をしていて心から感動したり、大人が感情を揺さぶられて涙を流したりする場面に立ち会うことはそう多くはないと思うんです。私たちはM&AセレモニストとしてM&Aに関わり、成約式という特別な空間を創り上げ、その場に立ち会わせていただいて、本当に貴重な経験をさせてもらっていると感じます。
堀江さん:そうですよね。私たちはその日だけですが、M&Aコンサルタントを信頼して当社の人生の一大決心をお任せいただき、最後の大切な節目に携わらせていただいていることに喜びを感じています。
―M&Aセレモニストとしてプレッシャーに感じるのはどんなところですか。
阿部さん:当社が「最高のM&A」の実現を掲げているなかで、成約式においてもその価値に見合うサービスが提供できているかは常に気にしています。お客様の期待値を超える式を創り上げたいですし、私たちが大事にしている文化をお客様にも体感していただけるかというところは意識しています。
堀江さん:お客様は成約式を迎えるまでさまざまな葛藤や想いを持っていらっしゃるので、同じ演出をしてもすべてのお客様に喜んでいただけるわけではありません。当日のお客様の表情から心情を察して、適切な距離感でコミュニケーションをとったり、ハッピーな雰囲気の時はいかに盛り上げたりできるかといった立ち振る舞いも重要だと思います。
―お二人とも前職は空港のグランドスタッフということですが、今の仕事につながると思うのはどんなところでしょうか。
堀江さん:人の表情から心情を察することに関しては、前職の経験はすごく生きていると感じます。
阿部さん:それは毎日数百人のお客様と接してきたからこそですよね。カウンターに向かう足音で急ぎ具合がわかるように、成約式の会場に入ってこられたときのファーストインプレッションはとても大事だと思うので、よく見るようにしています。
堀江さん:あとは、トラブルや緊急事態が起きた時のアドレナリンが出るスピードのはやさでしょうか(笑)。さまざまなケースを想定して、限られた時間内で解決することに慣れているのも強みだと思います。成約式当日で急な変更があったとしても臨機応変に対応させていただいています。
―M&Aセレモニストとして4年目を迎えますが、変化を感じることはありますか。
堀江さん:M&Aセレモニストという仕事は、成約式を通じて多様な方と出会い、さまざまな感情に触れることができるので、人間として成長し続けられますし、それが必要な仕事だと感じています。2024年度からは新入社員の5カ月目の研修にも携わるようになり、成約式の意義を広めるための効果的な伝え方や言葉の選び方なども今後も勉強していきたいと思っています。
阿部さん:最近では新たに、M&Aセレモニストがいない他のM&A仲介会社の成約式の運営を引き受ける取り組みもスタートしています。当社がスタンダードに行っていることでも、他社の方から「プロフェッショナルだね、日本M&Aセンターの成約式ってこんなにすごいんだ」おっしゃっていただくこともあり、私たちのサービスの付加価値を体感するとともに、自分の視野も広がっています。
―最後に今後の目標をお願いします。
阿部さん:先輩たちが丁寧に作り上げてきたM&A成約式は、当社にとって大事な文化です。これからも大切に守り、さらに発展させていくことで、M&Aセレモニストという仕事にもあこがれを持ってもらえるように頑張っていきたいと思います。
堀江さん:M&Aセレモニストという存在をもっと世の中に認知させていきたいという想いはメンバー全員が持っています。私たちの取り組みや想いを、社内外に発信していけたらと思います。
プロフィール
日本M&Aセンター 営業支援部 営業支援課
堀江 麻由(ほりえ・まゆ)
兵庫県出身。
新卒でユー・エス・ジェイに入社。その後、伊丹空港にてANAグランドスタッフとして10年勤務し、2022年4月に日本M&Aセンター入社。営業支援部にてセレモニスト業務をはじめ、西日本支社の拠点運営を担当。趣味は旅行と月2回の茶道おけいこ。
日本M&Aセンター 営業支援部 営業支援課
阿部 礼奈(あべ・れいな)
徳島県出身。
関西学院大学卒業後、成田空港にてANAグランドスタッフとして主に国際線業務を担当。
その後は株式会社リクルートにて新規開拓営業を経験後、2022年3月に日本M&Aセンター入社。営業支援部にてセレモニスト業務をはじめ、西日本支社の拠点運営を担当。趣味は(成約式で訪れる)各地の美味しいご飯とお酒を楽しむこと。