2018年に新卒で日本M&Aセンターに入社し、現在は海外事業部でインドネシア現地法人代表として拠点の立ち上げを行う河田 航佑さん。自ら手を上げ現地法人の立ち上げに携わることになったという河田さんにそのきっかけやインドネシアでの生活について聞きました。
―河田さんは新卒で日本M&Aセンターに入社されたんですね。
はい、私が入社した2018年4月当時は社員が約250名で、正直会社の知名度もあまり高くなかったと思います。就職活動では幅広い業種の会社を見ていましたが、就職サイトでの案内をきっかけに日本M&Aセンターの会社説明会に参加しました。M&Aは証券会社などが行うものというイメージで、中小企業が行うM&Aは頭になく、会社説明会で話を聞いて大きな衝撃を受けたことを覚えています。その後、人事部の担当者と話をする中で、「お客様に感謝されるこんなに素晴らしい仕事はない」と感じ入社を決意しました。
―入社後はどちらに配属となりましたか。
業界再編部(当時)の調剤薬局チームに入り、約2年は調剤薬局のM&Aを中心にお手伝いしました。その後、物流業界チームの立ち上げに伴い、物流チームに2年所属し、また調剤薬局チームに戻り1年勤務しました。業界再編部には合計5年所属していました。
―海外事業部への異動のきっかけを教えてください。
入社2年目の時に、社内の優秀者のみに参加資格が与えられる海外研修旅行でロンドンに行きました。金融街やベンチャー企業を訪問する中で、年齢、人種問わず様々な人が活き活きと働いているのを見て、日本の閉塞感と、世界の広さを感じたんです。
また業界再編部時代、地方のお客様が多かったので、5年間で47都道府県すべてに出張しました。日本国内の企業同士のM&Aを支援する中で、海外企業とのM&Aも選択肢に入れることができれば、日本企業がより活発になっていくのではないかという思いがありました。
海外M&Aをサポートできるスキルや能力を身につけ自分のキャリアを広げたいと思い、海外事業部への異動を希望しました。新卒で入社した先輩には海外拠点で活躍している方もいたので、キャリアを考える上での大きな刺激になりました。
―河田さんがインドネシア現地法人の立ち上げに携わることになったきっかけは。
自分で手を挙げました。2019年にインドネシア勤務歴のあったASEAN推進部 安丸 良広さんがインドネシア駐在員事務所を設立し、会社として現地法人化の目標はありましたが、時間と労力とお金がかかることもあり、ハードルが高くなかなか実現していませんでした。じつは人生で一度もインドネシアに行ったことがなく、そのうえ、「インドネシアは賄賂が多くてM&Aをする会社がないのではないか」という先入観を持っていたのですが、初めて訪れてみて、大きな衝撃を受けました。
うまく言葉で表現できないのですが、勢いと活気からこの国のポテンシャルを感じ、すっかり魅了されてしまったんです。その後インドネシア企業とのM&Aをサポートさせていただいたこともあり、現地に知り合いも増えました。様々な会社のイベントに呼んでいただく中で、改めて大きなチャンスにあふれた国だと思い、インドネシア現地法人設立の目標ができました。
―2025年6月にインドネシア現地法人が設立されましたが、設立して感じたことは。
M&Aの需要があるので、日本以上に譲渡企業の情報が集まってきます。ただまだM&Aそのものの認知度が高くなく、そのうえ日本企業とのM&Aとなると、そのメリットを理解している人は多くはありませんので、私たちが丁寧に説明していく必要があります。「M&A」という言葉自体そこまで知られていないので、インドネシア現地法人の名前も「日本M&Aセンター」ではなく、「PT Nihon Mergers And Acquisitions Center Indonesia」と記載しています。
―現在の業務内容について教えてください。
駐在員事務所の頃はFAの日本側アドバイザーとして活動していました。今は日本企業がM&Aをする対象会社の情報を現地の金融機関や会計事務所、ローカルの経営者から集め、日本と同じ仲介モデルでインドネシアのM&Aを推進していくための環境を整えています。
また現地法人の拡大のため、ローカル人材の採用や社内規定の整備を行っています。社内にノウハウはあるものの、企業のようにゼロから会社を作るのでやることは非常に多いです。だからこそ学ぶ点も多く、日々成長を感じています。
現在メンバーは私含め3名ですが、10月からは現地のコンサルタントが入社します。その1人を採用するにも2月から採用活動をスタートして30名の面接を行いました。1人目の現地コンサルタントに関しては、妥協せず探した方がいいというアドバイスを役員からいただいていたので、この人だと思う方が見つかるまで探しました。現地の金融機関で長くM&Aに携わってきた方で、日本とインドネシアの架け橋になることに共感してくれた点が決め手になりました。
―インドネシア特有の苦労はありますか。
文化的なところで言うと、賄賂や二重帳簿が当たり前に存在し、創業以来税金を一度も払っていない会社がたくさんあります。帳簿はきれいにしてからM&Aを行うので、日本企業には安心してM&Aを行っていただけるようにしていきます。
―インドネシアでの暮らしはいかがですか。
今はまだ一人暮らしですが、数ヶ月後に家族が来ることになっています。今はその準備中で、休日はビザの準備や子どもの幼稚園探しなどを行っています。食事も日本食レストランが充実しており、東京に住んでいるのと同じ感覚で過ごせています。インドネシアは車社会なので車を持っていないと多少不便なところもありますが、地下鉄に乗れば大抵のところには行けます。改札ではセキュリティチェックもあり、中には警備員も常駐しているので安心して利用できています。6年間駐在しているメンバーは毎日通勤で地下鉄を利用していますが、スリなどの危険な目にあったことが一度もないと言っていました。
―今後の目標を教えてください。
長期的なプランですが、今後5年から10年でインドネシア現地法人をASEANで一番大きな拠点にしたいと思っています。インドネシアは人口が3億人近く、独立100周年となる2045年に先進国入りを目指す(黄金のインドネシアビジョン、Indonesia Emas)と言われています。我々も国の成長に負けないスピード感で拡大していきたいです。
また、このインドネシアのビジョンに日本企業がM&Aのパートナーとして寄与するべく我々もサポートしていきたいと思っていますが、これは我々日本人だけで達成できるものではないと思います。将来的には私のような日本人ではなくインドネシア人がリーダーになり、インドネシアの若者が働きたいと憧れるような組織・チームにしたいと思っています。
プロフィール
PT Nihon Mergers And Acquisitions Center Indonesia(NMAI) Director
河田 航佑(かわた・こうすけ)
埼玉県出身。慶應義塾大学経済学部卒業後、日本M&Aセンターに入社。入社以来、業種特化事業部にて業界再編型のM&Aに取り組む。外資系企業とのクロスボーダー案件他、主担当として20件以上の成約実績がある。2023年4月より海外事業部に参画し、2025年からはインドネシアのジャカルタをベースに主にインドネシアと日本のM&Aを支援している。
趣味はスポーツ観戦(広島カープファン)と旅行、現在2児の父。