
大手金融機関を経て、PMI(M&A後の統合プロセス)をサポートする日本PMIコンサルティングで活躍する増子 達也さん。現在はPMIコンサルタントとして複数のプロジェクトを担当する一方、マネージャーとしても活躍し、2025年度の日本PMIコンサルティング社長賞を受賞しました。増子さんに、PMIの仕事の難しさや原動力について聞きました。
※所属・肩書等は取材当時。
―社長賞の受賞について、率直なお気持ちを教えてください。
正直に言うと、かなり驚きました。受賞の連絡をもらったのは3日ほど前だったのですが、あまり実感はなくて、「本当に自分なのか」という気持ちのほうが大きく、完全に想定外でしたね。
振り返ってみると、これまで自分が取り組んできたこと、特にプロジェクト単位ではなく会社全体の視点で動き始めたことが評価されたのかなと感じています。自分一人の成果ではなく、M&Aコンサルタントの方々、プロジェクトメンバー、上司の支えがあって初めて出せた結果なので、「チームでいただいた賞」という認識が強いです。

―PMIとはどのような仕事なのか、また増子さんの業務内容についても教えてください。
PMIは一言で言うと、「M&Aで成果を出し切るためのプロセスを支援する仕事」です。M&Aは成約して終わりではありません。本当に重要なのはその後で、シナジーをどう生み出すか、業績をどう伸ばすか、M&Aを経て変容した組織をどう運営するかという部分です。私たちはそこに入り、企業の現状を一から把握し、成果創出まで伴走します。
私の業務は大きく分けて、PMIプロジェクトの推進と提案活動です。PMIのプロジェクト推進においては、案件ごとに2〜3名のチームを率いる責任者として、全体の品質を担保しながら進行管理を行っています。加えて、クライアントとの定例会議や意思決定の場に直接入り、「今何を優先するべきか」「どう進めるべきか」といった判断をその場で整理し、プロジェクトを前に進める役割も担っています。また、複数の案件を同時並行で担当しており、それぞれのプロジェクト状況を把握しながら、リソース配分や優先順位を調整することも重要な役割です。
さらに昨年度マネージャーになってからは、日本M&Aセンターの営業部門と連携したPMI支援サービスの提案活動にも関わるようになりました。M&Aプロセスの初期段階からM&Aコンサルタントとともに面談に同席し、PMIの観点で課題を見極めて提案につなげる動きも増えています。マネージャーになったことで、個々のプロジェクトを成功させるだけでなく、会社としてどう成長していくかまで考えて動くようになりましたし、自社の採用活動や組織づくりにも関与しています。
―日本PMIコンサルティングに入社された経緯を教えてください。
前職は銀行で法人営業をしていました。そこでは資金調達などには関わりましたが、「経営そのもの」に深く踏み込むことは難しいと感じていました。もともと、将来的には自分自身が経営を担える人材になりたいという思いがあり、その中でPMIという領域に出会って、「これは経営に近い仕事だ」と感じました。PMIには、会計、人事、経営戦略、業務改善、ITなど、企業経営に必要な要素がすべて詰まっています。いわば「経営の総合格闘技」のような仕事です。ここで多くの案件を経験すれば、経営者として必要な視点や意思決定力を実践的に身につけられる。そう考えて、日本PMIコンサルティングを選びました。今もその考えは変わっていません。
―印象に残っているプロジェクトを教えてください。
通常の数倍の規模で関係者も非常に多かった大型案件は、難易度が高く印象に残っています。このプロジェクトで重要だったのは、「組織をどう一つにまとめるか」という点でした。営業、開発、生産、マーケティングなど、それぞれの部門で役割や目標が違います。その状態のままで統合を進めてしまうと、認識のズレが生まれがちです。そこで、各部門のミッション整理、行動指針の明確化、全体の方向性の統一を行い、全員が同じ方向を向ける状態をつくりました。結果として、9カ月の支援を通じてしっかりとバリューアップにつなげることができました。
― PMIの難しさはどこにありますか。うまくいかなかったこともあるのでしょうか。
失敗できない仕事ということもあり、大きな失敗と呼べるような経験はありませんが、難しいのは人の感情です。M&A直後は、現場の方々が不安を抱えています。自分の役割がなくなるのではないか、組織がどう変わるのかなど、さまざまな不安がある状態では、どんな優れた戦略も実行されることはありません。
PMIが成功する企業に共通しているのは、社内の雰囲気が前向きであることです。PMIでは、既存業務に加えてシナジー創出や業務改善といった「追加の取り組み」が求められます。そのため、現場のモチベーションが低いと、施策はなかなか進みません。一方で、組織の雰囲気が良く、前向きな状態であれば、「新しいことをやってみよう」「お互いに協力しよう」といった動きが自然と生まれます。こうした環境が整って初めて、PMIは成果につながっていきます。
だからこそ、私たちは戦略を作るだけでなく、組織の空気を変えることにも強くこだわっています。その一つの取り組みとして、プロジェクトの節目、特にPMIの土台が整った後には、経営方針発表会を実施し、今後の方向性を全社員に共有します。「この会社はこれからどこに向かうのか」「自分たちはどう関わるのか」が明確になることで、社員の納得感や安心感が生まれ、結果として前向きな空気が醸成されていきます。
―増子さんにとっての仕事のやりがいと原動力は何ですか。
自分の一つひとつの発言が価値になることです。「どう思う?」と聞かれたときに、その場で考えて答え、その判断がクライアントの意思決定に使われる。そこに責任と面白さがあります。また、私たちは「クライアントが成功すること」を目標に仕事をしています。だからこそ、常に全力で先回りして課題を潰していく。その緊張感も含めてやりがいを感じています。
―忙しい中でのリフレッシュ方法を教えてください。
旅行が好きで、まとまった休みのタイミングでは海外に行くことが多いです。昨年の年末年始にはタイに行き、今年のゴールデンウィークにはイタリアとギリシャに行きました。PMIは案件ごとに業務が集中する仕事なので、その合間でリフレッシュするようにしています。普段は責任の重い仕事をしている分、全く違う環境に身を置くことで気持ちをリセットするのが大事ですね。日常では、飼っている犬と散歩したりしてリラックスしています。
―最後に、PMIという仕事の魅力を教えてください。
PMIは、「企業の未来をつくる最後の工程」だと思っています。M&Aをして終わりではなく、そこから成果を出し切る。企業が本当に変わる瞬間に立ち会える、非常にやりがいのある仕事です。
そして個人的には、経営を学び、将来につなげるための最適な環境だとも感じています。もし関わる機会をいただけるのであれば、成果が出るところまで責任を持ってやり切ります。
プロフィール
株式会社日本PMIコンサルティング
増子 達也(ますこ・たつや)
1995年生まれ、東京都出身。
立教大学卒業後、三井住友銀行で法人営業を経験。2020年11月に日本PMIコンサルティング入社。累計80件超のPMI支援実績。現在は、マネージャーとして、プロジェクトの推進責任を担う。趣味は海外旅行とスポーツ観戦(サッカー)。




