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こんにちは。
日本M&Aセンターのマレーシア現地法人に所属する駐在員として、マレーシアの魅惑の首都、クアラルンプールに2023年の8月より赴任している坂本です。
日本の都市とは異なるこの熱帯の国での生活は、私にとって日々の新しい発見と驚きの連続です。 このマレーシアという国は、歴史的な背景や多様な民族、豊かな自然環境とが絡み合ったユニークな場所であり、その魅力は一言では表現できるものではありません。
私がここでの生活をスタートさせてから、約2か月間の経験を通じて、マレーシアのリアルな姿、そしてこの国の人々の温かさや国としての勢いを感じることができました。本日は少し、堅苦しいM&Aの話から離れ、家族4人での生活を通じて感じたマレーシアの魅力や日常、そしてその背後にある歴史や文化を、紹介していきたいと思います!!
この土地におけるマレーシアの歴史は1400年のマラッカ王国(Malacca Sultanate)から始まったと言われています。
当時は、スパイス貿易で栄え、多くの国々との交流を持ちました。しかし、その後の16世紀から20世紀にかけての長い間、ポルトガル、オランダ、イギリスといったヨーロッパ列強の植民地支配を受けることとなります。1942~1945年の3年間は日本の占領下にありましたが、その後はまたイギリス領となり、1957年にマラヤ連邦として独立。1965年に、現在のマレーシアになりました。
上記のような植民地時代を経て、マレーシアは異なる文化や民族が融合した独自の歴史的背景を持つ国となりました。中でも、現在イギリスの政治思想を基軸にするコモン・ウェルスに属するマレーシアは、特にイギリスの影響が深く、行政制度や教育制度にもその影響や名残りを見ることができます。右ハンドル、左車線走行となっている車の走行ルールも、上記のひとつと言えるでしょう。
また、マラッカの旧市街やジョージタウンなどの歴史的地域は多くの西洋建築の名残が見られユネスコの世界遺産にも登録されています。
マレーシアは、多様な民族が調和を保ちながら共存する国です。
マレー語でBumiputera(英語の“ネイティブ”と同義)と呼ばれるマレー系の人々は人口の約7割を占めます。マレーシアの主要な民族グループであり、彼らは国の政治や文化において中心的な役割を果たしています。伝統的なマレー文化は、家族の絆や共同体の重要性、そしてイスラム教の教えに深く根ざしています。
中華系の人々は約2割。彼らは主に商業やビジネス界での影響力があるとされ、マレーシアの経済発展に寄与してきました。また、中国の伝統的な祭りや習慣、食文化はマレーシアの多様性を豊かにしています。我々が普段、M&Aのご支援をするビジネスオーナーの多くが、この中華系マレーシア人です。
タミル、マラヤーラム、テルグなどの多様な言語や文化を持つインド系の人々は約0.7割。そのコミュニティは、特に宗教や文化の面でマレーシアをカラフルに彩ります。ヒンドゥー教のお正月であるディワリは「光の祭典」とも呼ばれており、街をきらびやかに彩るそうです。
人口における割合は約0.3割と低いものの、マレーシアにはさまざまな先住民族が住んでいます。彼らの伝統的な生活様式や信仰は、マレーシアの文化的遺産の一部として大切にされています。それぞれの民族の独自の伝統文化は、サバ州、サラワク州、ボルネオ島などで見学することも可能です。
マレーシアという1つの国で、これらの多様な文化や伝統に日常的に触れることは、新しい視点や理解をもたらす貴重な経験となっています。
マレーシアを地政学的に俯瞰すると、まさにアジアと世界の交差点としての一翼を担ってきたと言えると思います。東南アジアに位置し、世界の主要な海上交易ルートであるマラッカ海峡に面していることから、この地は古くから多くの文明や商人、冒険家が交差する土地でした。
マラッカ海峡は、アジアとヨーロッパを結ぶ主要な海上ルートであり、これによりマレーシアは多くの国々との外交や経済関係を築いてきました。この戦略的な位置は、マレーシアがASEANや他の国際的な組織において果たしてきた役割にも影響を与えています。
マラッカ海峡に面しており、世界の主要な海上交易ルートであることについては、シンガポールも同じではないかと思われるでしょう。実際にシンガポール港はアジア最大級のハブ港とも呼ばれます。
しかし、そのシンガポールに隣接していながら、マレーシアにははるかに広大な土地があり、シンガポールと比較して賃金も安く、且つ税金もそこまで高くないというメリットは、製造業にとって魅力的なのです。ドイツのフォルクスワーゲングループは、2009年にマレーシアを部品調達ハブ拠点にするという考えを明らかにしており、2021年にもジョホールに部品のディストリビューションセンターを新たに設立しています。
また、エネルギーとヘルスケア(製薬・医療)分野等、多くの外資系企業が、地政学的メリットによりマレーシアに拠点を置いています。
マレーシアでは、イスラム教が国教(連邦の宗教)と憲法で定められており、国民の半数以上がイスラム教徒です。マレーシア政府には「マレーシアイスラム開発省(JAKIM)」という機関があり、イスラムの教義に則った品質基準を満たす食品やサービス等に「ハラル認証」を授与します。実は、このハラル認証を初めて体系的に文書化してまとめたのが、マレーシアでした。
また、マレーシアは「ハラル・ハブ」として、ハラル産業における世界のリーダー的な存在であり、「マレーシア国際ハラル見本市(Malaysia International Halal Showcase)」というイベントが毎年開催されるほどです。
このように、現在世界の人口の約25%(約20 億人*)を占めると言われているイスラム教徒が、安心してサービスを受けたり買い物をしたりすることを楽しめる土台がマレーシアにはあるのです。
*TTG ASIA「Halal tourism development to be shaped by under-40s」
日本企業の視点から見ると、マレーシアの地を中心に隣国のアジアマーケットやイスラム教マーケットにビジネスを展開していくことは、とても効率的で戦略的であると考えます。
マレーシアの食文化は、国の多様な民族とその歴史の反映として、まさに世界のさまざまな文化が融合した場所と言えるでしょう。
伝統的なマレー料理は、ココナッツミルクやレモングラス、ターメリックなどの香り高いスパイスを使った料理が特徴的です。「レンダン」や「サテ」など、スパイシーでありながらも、まろやかな味わいで人気です。
伝統的な中国の家庭料理に基づきつつも、マレーシア独自の変化を遂げた料理が多数存在します。「ワンタンミー(雲呑麺)」や「バクテー(肉骨茶)」は、多くの日本人にも愛されています。
カレーやロティなど、スパイスのきいた濃厚な味わいが特徴的です。特に「ロティチャナイ」や「タンドリチキン」は、インド系のレストランや屋台で手軽に楽しめる人気メニューです。
上記のみならず、マレーシアでは、ハラル食品やベジタリアンメニューも豊富に取り揃えられています。これは、さまざまな宗教や文化を尊重するマレーシアの姿勢が食文化にも反映されていることを示しています。
マレーシアの日常は、私たち日本人にとっての常識や慣習とは異なる部分が多く、その違いに困惑することも多くありつつも(笑)、その驚きや発見の瞬間がこの国との深い絆を築く手助けとなっています。
クアラルンプールのような大都市には、近代的なビルやショッピングモールが立ち並びますが、中心部であっても、巨大なビルと青々とした緑が共存し、熱帯気候ながら清々しい毎日を送ることができています。一方、郊外に目を向ければ、緑豊かなジャングルや美しいビーチが広がっています。この都市と自然の調和は、マレーシアの魅力の一つです。
地元の市場やバザールは、マレーシアの生活をさらに身近に感じる場所です。新鮮な果物やスパイス、伝統的な手工芸品まで、さまざまな商品が所狭しと並べられています。特に夜のフードマーケットは、その場で調理される料理の香りと活気に満ち溢れています。
マレーシアはマレー語を公用語としていますが、様々な言語的背景がある民族が共存している為、日常生活ではマレー語の他にも、英語や中国語、タミル語など、さまざまな言語が飛び交っています。マレーシア人が喋る言語は、しばし「Rojak(好きな食材を切ってごちゃまぜにして食べる伝統料理)」と揶揄され、一つの会話の中で、マレー語、英語、中国語、タミル語等が組み合わせて使われることも多々あります。時々、英語話者であってもローカル同士の会話についていけない場面もあります。
それでも、「了(ラ)」や「吗(マ)」といった中国語由来の独特の語尾は、コミュニケーションをよりフレンドリーにする魔法の言葉とも言えます。マレーシアやシンガポールでよく聞かれるのですが、何かを依頼したときなどに、「オーケーラ!(OK了、『分かりました』の意)」と言われると、なんともいえない独特な安心感を覚えてしまいます。
マレーシア生活では、日本とは異なるどこか特有の“ゆるさ”やカジュアルさを感じる事があり、時に戸惑うこともあります。それでも、人々のあたたかさを感じる場面も多々あるというのが、マレーシアで実感していることです。
マレーシアは、伝統的に家族やコミュニティを重視する文化が根付いています。そのため、子どもたちは常に温かく受け入れられ、社会の中心として扱われます。公共の場所やレストラン、ショッピングモールには、子どもを楽しませるための施設やプレイエリアが充実しており、家族連れにとって非常に過ごしやすい環境となっています。どのレストランに行っても、子ども用のいすや子ども用のカトラリー・お皿が必ずあります。
また、多くの公園やリゾート、動物園など、子どもたちが自然と触れ合い、学びながら遊ぶことができる場所も豊富です。教育においても、異なる文化を考慮に入れたした学習環境が備わっており、子どもたちが異文化を尊重し合いながら成長する土壌が整っています。
4歳と2歳になる子どもがいる私は、無限に存在する週末アクティビティや、どこに行っても子供フレンドリーな人々、レストラン等に毎度感動しながら生活を送っています。そして、子どもたちにとっては、この国が提供するフレンドリーで学びの多い環境は、彼らの成長や人間形成において魅力的な場所となっているのではないかと思います。これらの特徴は、マレーシアが国際的にも注目される理由の一つであり、駐在員としての私たちにとっても、子どもたちと共に過ごす日常を豊かにしてくれます。
マレーシアの生活は、物価の手頃さやその環境が、日本や他の先進国に比べて非常に魅力的であると多くの駐在員や移住者から評価されています。
マレーシアのローカルフードは非常に手ごろな価格で楽しめます。例えば、屋台やローカルのレストランでの一食は、安価であっても美味しい料理を堪能することができます。特に「ナシレマ」や「ミーゴレン」などの伝統的な料理は、手ごろな価格でありながら満足度が高いと評価されています。弊社が入居するオフィスでも、食堂階には、中華系、マレー系様々なレストランが立ち並び、約400円程度で満足の行くランチを取ることが可能です。
交通の面においては、公共交通機関の利用料金も非常にリーズナブル。都市部のバスやLRT(高架鉄道)は、効率的に移動する上でのコストも抑えられます。
勿論、近年のインフレに応じてマレーシアにおいても他国同様物価が高騰しており、駐在員にとっては、逆に日本よりも生活費が高くつく場面も多々ありますが、ローカルマーケットにおいては依然安価で購入できるサービスや商品も多数あります。
教育面においては、英語を教育言語とするインターナショナルスクールが多数存在し、子育て世代にも適した環境が整っています。また、現地の学校も、高い教育水準を持ちながらも比較的手ごろな学費で利用できます。私の子どもは、現地の保育園に通っていますが、英語のみならず、マレー語、中国語の絵本や歌、また季節の行事を通して、多様な文化触れることのできる環境が整っています。
マレーシアの医療サービスも、高い水準のサービスを利用できます。特に、都市部の病院やクリニックは、最新の医療設備や英語を話すスタッフが揃っています。駐在員が多く住むモントキアラというエリアでは、夜遅くまで日本語対応可能なお医者さんが常駐する日系のクリニックも存在しますので、安心して生活ができます。
マレーシアは、その豊かな歴史、多様な民族、そして独特な日常生活を通じて、私にとって一度も体験したことのない魅力的な国として映っています。その土地が持つ自然の美しさや都市の活気、そして何よりも人々の温かさや包容力は、ここでの日々を特別なものとしています。
この記事の読者にも、マレーシアの魅力を少しでも感じていただければ幸いです。そして、いつかこの美しい国を訪れて、その魅力を直接体験してみてください!!!!
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坂本 遼介 Ryosuke Sakamoto
Nihon M&A Center Malaysia Sdn. Bhd.(マレーシア現地法人) Senior Deal Manager
シンガポール、エジプトで幼少期を過ごし、米カリフォルニア大学サンディエゴ校卒業。米系大手コンサルティングファームを経て、2020年日本M&Aセンターに入社。
東南アジア、欧州等の外資系企業と日本企業とのクロスボーダーM&A支援に従事。事業承継のみならず、ファンドEXITや、上場企業カーブアウト案件も実績あり。