日本M&Aセンターは、書籍『中小企業M&Aスタンダード 法務/業界ルールの勘所』を金融財政事情研究会より2024年3月19日に発売しました。著者の法務部 横井 伸さん、池田 瑞季さんに本書に込めた想いを聞きました。
―この本の特長を教えてください。
横井: 本書の最大の特長は、日本で初めて、中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第2版)」とM&A仲介協会「業界自主規制ルール」の両方に完全対応した中小M&A法務のスタンダード・テキストになっている点です。
第一部「法務編」と第二部「業界ルール編」の2部構成で、第一部では、単なる法務ナレッジの解説ではなく入門から標準レベルの法務実務を完全網羅しているほか、第二部では、最新の業界ルールをわかりやすく解説しています。
共著者の池田瑞季さんが司法書士の視点から第一部を執筆し、私は弁護士の視点からそれを補うかたちで、二人三脚で書き上げました。ほかにも法務部のメンバーや、昨年まで中小企業庁で勤務され、「M&Aガイドライン」(初版)、「中小PMIガイドライン」の策定に行政側で尽力された皿谷将弁護士(現・バトンズ執行役員)にも執筆協力をいただきました。
本書は、M&Aに携わる皆様に向けて、日本M&Aセンターグループのノウハウや知見を公開する、策定されたばかりの業界自主規制ルールにも完全対応した解説書籍です。
―中小企業の後継者問題をきっかけにM&Aへの関心が高まる中で、M&A専門会社も増加し市場が急速に拡大しています。そうした業界の現状に、本書が果たす役割をどう捉えていますか。
横井: 中小企業M&Aについて書かれた本を探すと、法務や会計、税務の標準的なナレッジの解説本はありますが、業界における適正なディールの進め方を示した本はありません。本書でも第一部では法務の標準的なナレッジを解説していますが、第二部では業界で起きている利益相反の問題や過剰な広告、営業に対する対処など、公正なM&Aとは何かという視点から、最新の業界ルールを分かりやすく解説しました。
―業界の課題について、池田さんはいかがですか。
池田: 元々私の中にある課題感として、法律や契約の「わかりにくさ」というのがあります。私は大学で消費者法のゼミにいたのですが、一般消費者が消費者被害に遭う背景のひとつに、法律や契約のわかりにくさがありました。それをわかりやすい言葉で伝えてくれる人が必要だと感じていて、M&Aの業界にも当てはまると思っています。
M&Aは契約内容が難しく、関係する法律も幅広いので、営業担当者等が経営者の方にわかりやすく説明し、きちんとご理解いただいた上で締結することが、トラブルを少なくする第一歩だと考えています。
そこで、本書はわかりやすく伝えることを意識して書きました。視覚でも理解しやすいように図表も多く掲載するなど工夫しましたので、他業界から来た方が自学するテキストにしていただくのも良いと思います。
―M&Aブティック・専門業者が激増する中、業界全体の未来についてはどうお考えですか。
横井: 自主規制ルールができたとはいえ、まだ運用が始まって間もない状況です。欲張りな願いかもしれませんが、本書によって、業界全体のクレームがなくなってほしいのです。売上が立てばいいというのではなく、顧客満足度を高め、全ての当事者がウィンウィンになる。そのためには公正なM&A取引が必要です。
M&Aに携わる皆様に向け、日本M&Aセンターグループのノウハウや基本知識を惜しみなく公開することで、業界全体の質が向上し、信頼が高まることを願っています。
『中小企業M&Aスタンダード 法務/業界ルールの勘所』詳細はこちら
M&Aマガジンより転載【M&A法務新刊】「中小M&Aガイドライン(第2版)」「業界自主規制ルール」に完全対応した初の解説本