株式会社ネクストナビ財産コンサルタントシニアプライベートバンカー森田 貴之さん
※本記事は、日本M&Aセンター広報誌「MAVITA」VOL.5からの転載です。
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オーナー経営者の場合、自社株は財産の中で大きな割合を占めます。事業承継の方法によってとるべき相続対策や考慮すべきポイントが異なるため、事業承継を考える際は、承継後の収入面や相続の観点など、家族の人生計画も含めて総合的に検討を進めることをおすすめします。
事業承継や相続に関する手順や法律には非常に高い専門性が求められるため、税理士、弁護士、M&A仲介会社など専門家の助言も活用することで、リスクの低減にもなります。家族にもきちんと知識を説明・共有し、全員が納得する形で進めることで、後継者がスムーズに事業を引き継げる環境を整えることにもつながるでしょう。
事業承継の方法を検討するにあたって知っておきたいのが自社株の価値。自社株の価値のつけ方は承継方法によっても異なります。親族・社員に承継する場合に基準となる「相続税評価額」と、M&A(第三者)における売買価格の目安となる「株式評価額」の2種類の評価額は、事業承継方針を検討する上で把握しておくことが重要です。親族承継で相続や贈与にて後継者へ株式を渡す際に、自社株の相続税評価額が想像以上に高く、株式を渡す際の相続税・贈与税がネックになることもありえます。
相続税評価額は顧問税理士に算出してもらったことがあるという方もいらっしゃると思いますが、株式評価額は算出方法が異なります。株式評価額にはいわゆる「のれん」が加味され、会社の将来性や譲受け企業側の需要などにも影響を受けます。傾向としては株式評価額が相続税評価額よりも高くなり、中には数倍の額で自社株を譲渡したという経営者もいます。
まずは、金融機関やM&A仲介会社に依頼して具体的な株式評価額を算出してもらい、比較したうえで経営者ご自身の考えを明確にしてみましょう。
事業承継や相続においては、絶対的に正しい答えというものは存在せず、最終的に「納得解」が得られることが重要です。現在の状況、将来の推測、お気持ちの部分、家族の関係性など、さまざまな要素を考慮する必要があります。私の役割としては、自分の中に結論は持たずに、あらゆる可能性を提示してリスクを減らしたり、税務面の観点から合理的に考えた場合の助言をしたりすることだと考えています。
子どもに継がせるなどの承継方針が早く決まれば、株式の承継までに「時間」があるため、選べる対策が増えます。結果としてより効率よく後継者に株式を渡すことができます。また、事前に合意形成ができていないことによるトラブルを防ぐためにも、早めに家族で話し合う機会を持ってみてはいかがでしょうか。
相続には期限があるためとりあえず自社株を子3人に法定相続通りに分配した。経営権が分散されたことで誰も過半数の株を持っておらず、重要な意思決定が困難な状況に。
経営者の父親は長男に継がせるつもりで自社株を生前に承継したが、結局M&Aで会社を譲渡し長男が対価を受け取った。その後、父親が相続の方針を決めずに亡くなり、相続にあたって次男・三男は長男がM&Aの対価を受け取ったことを考慮に入れるべきと主張。一方で長男はその対価は会社への貢献に対する報酬であるため、相続財産は3等分にするべきと主張し、対立が生じた。
プロフィール
株式会社ネクストナビ
財産コンサルタント
シニアプライベートバンカー
森田 貴之(もりた・たかゆき)
銀行にて中小企業オーナーや富裕層営業を経験した後に、青山財産ネットワークスに入社し2019年よりネクストナビに出向。金融資産家や企業オーナーの財産活用と承継に対する相談対応に従事。