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【広報誌「MAVITA」Vol.3より】M&Aを戦略の中心に置く成長企業の現在地

【広報誌「MAVITA」Vol.3より】M&Aを戦略の中心に置く成長企業の現在地


「世界一のエンタメ企業」をビジョンに掲げ躍進を続けるGENDA。推進力の中心にM&A戦略があります。
その狙いとは?

日本M&Aセンターが発刊する広報誌「MAVITA」Vol.3で掲載した、M&Aを戦略の柱に躍進を続けるエンターテイメント企業GENDAの申 真衣社長と、サーチファンドの仕組みを利用して経営者となり、事業承継後2年目にして売上高を2倍に伸ばしGENDAにグループインしたアレスカンパニーの大富 涼社長の対談をお届けいたします。

(日本M&Aセンター 広報誌「MAVITA」Vol.3より転載)

コロナ禍でも活況だったアミューズメント施設運営市場

―GENDAは、ゲームセンターの運営などで伸長しています。起業の経緯を伺えますか?

申社長 私は新卒でゴールドマン・サックスに入り、金利・為替系のデリバティブの商品開発・提案業務等を担当していました。やりがいを感じながら日々忙しく過ごしている中、ある時「LIFE SHIFT」という本を読んで「人生100年時代、80歳まで働きたい」と思い、転職や起業の選択肢もあるのかもしれないと考えるようになりました。そんな時、共同創業者の片岡尚(現代表取締役会長)と出会ったんです。片岡は当時、イオンファンタジーとイオンエンターテイメントの代表取締役社長で、アミューズメント施設運営に精通したプロフェッショナルでした。20年以上、アミューズメントの市場でキャリアを築いた片岡の話を聞き、アミューズメント市場の面白さと可能性を感じて起業を決めました。

―この領域の面白さ、可能性とは?

申社長 アミューズメント市場は2006年には7000億円規模でしたが、14年には4200億円に下がり、市場規模の縮小を経験しています。しかし、その後は、クレーンゲームなどプライズ(景品)ゲームの人気に牽引され、コロナ禍に入るまでは右肩上がりで伸びてきています。また、市場の特徴としてアミューズメント事業は地方に数店舗を運営しているようなオーナーも数多く、大手の寡占化が進んでいないという事実も興味深いです。こうした可能性を踏まえ、ここで私たちがしっかりと市場を広げていくという道筋ならうまくいくのではないか? と思いました。

―なぜプライズゲームが伸び続けたのでしょう?

申社長 アニメなど二次元の作品やキャラクターの人気拡大が大きな要因と考えています。動画配信サービスの普及で世界中、同じタイミングでアニメなどのコンテンツを楽しめるようになったこともあり、アニメファンが増えました。アニメの人気キャラクターIP(知的財産)の景品を多くの人が求め、ゲームセンターで遊ぶ方が増えています。さらに取った景品をSNSにアップしてファン同士の交流を図るなど、遊び方の幅も広がっていますし、中古市場サービスが増えたことで、獲得した景品の出口ができプレイをする心理的ハードルが下がりました。こうした3つの要因がプライズゲーム人気に繋がっていると考えます。

ポテンシャルある企業と本気で世界一を目指す

―日本アニメのIPは世界的にも大人気です。GENDAが「2040年までに世界一のエンターテイメント企業に」のビジョンを掲げるのも合点がいきます。

申社長 ありがとうございます。一方で、アミューズメント業界は上位10社でも半数程のシェアしかなく、中小の運営会社が非常に多いというのが現状です。地方にはお客様の要望に応えきれないと歯がゆい想いをしている運営会社も多いと聞いています。1社だけでは魅力ある景品の仕入れコストが合わなかったり、設備投資が難しかったり、後継者問題を抱えていたりもします。
こうしたポテンシャルがありながら課題を抱える会社がGENDAにグループインすることで、より多種多様な景品を仕入れることが可能になりますし、お互いのノウハウを共有し合うことでアミューズメント業界全体が活性化されると考えています。ロールアップM&Aで、当社グループが運営するアミューズメント施設数も急速に増加しています。

―それが、M&Aを主軸にした成長戦略だと。

申社長 創業当初はアミューズメント施設へのゲーム機レンタル事業からスタートしましたが、積極的なM&A戦略でゲームセンターやプライズの企画開発など関連領域の会社にもジョインしていただいています。当社の大きな転機は、2020年のセガ エンタテインメントの株式取得でした。当時200店舗だった店舗数も、現在は約300店舗にまで増え、スケールメリットが出てきています。こうした流れの中で、昨年ジョインいただいたのがプライズの卸を手掛けている大富社長率いるアレスカンパニーなんです。

20代で事業承継後1年半でグループ入りした理由

―アレスカンパニーは1999年設立のプライズ専門の中堅卸企業です。大富社長がサーチファンド(※下図参照)の仕組みで承継した会社と伺いました。

大富社長 はい。私は三菱商事を経てコンサルティングファームに転職し、複数企業の経営戦略策定やPMI(M&A後の統合プロセス)などの経営課題解決をしていました。ただ元々は大学院で経営を学んできた身として、「机上で身につけた知識を実際に社会に役立たせたい」意識があり、また、経営者の思考・技能は経営者としての経験からしか身につかないと感じており、できるだけ早く社長になろうと決めていました。
個人が事業承継型M&Aを行い、経営者となるサーチファンドの仕組みには以前から興味を持っていました。2020年にサーチファンド・ジャパンが設立されたので、サーチャー(経営者候補)として参画し、2022年に現在の会社を事業承継、経営を主導してきました。

サーチファンドの仕組み
サーチファンドとは、経営者を目指す個人が主導して中小企業のM&Aを行い、自ら経営に携わる活動です。優秀な経営者候補と魅力的な中小企業をつなぐ、社会的意義の高い投資の仕組みとされています。サーチファンドに取り組む経営者候補は「サーチャー」と呼ばれ、優秀な人材にとっての新しいキャリアとして世界中で拡大を続けています。

アレスカンパニーに魅かれた理由は?

大富社長 私自身、経営を通して「日本のグローバルプレゼンスをあげたい」と常々考えていて、その実現に最適な企業だと思ったからです。アニメは世界に通用するソフトパワーの1つですが、関連するアミューズメント事業に申社長同様に私も可能性を感じたのです。同時に、プライズゲームにおける調達の課題も感じていました。老舗卸業のアレスカンパニーの立ち位置は、そうした課題感の中ではユニークでした。また、経営改善の余地もあり、私がお役に立てる部分もあるかなと考えたわけです。

―調達の課題とは?

大富社長 市場が活況なこともあり、1店舗に置かれるプライズゲームの筐体(きょうたい)数が増えて、発注する景品も多品種になりました。店の特性に沿った魅力的で多彩な品揃えを用意する必要がある中で、今後はプライズの調達においても、高度で専門的な知見が求められるようになると考えたのです。

―実際に承継後2年目にして、売上高を2倍にまで伸ばされたそうですね。

大富社長 私が行ったのは大きく2つで、まずは2人しかいなかった「営業職の拡充」です。熱意ある素晴らしい方々に参画いただけたことで、これまでフォローアップできなかったお客様まで丁寧にお付き合いできるようになりました。
1つ目は「DX化」。社内でバラバラだったお客様のデータを1つの販管システムに一元管理し、社員は誰しも見られるようにし、クロスセルが一気に増えました。こうして地道に仕組み化した結果、12億円ほどの売上高が1年後に24億円になり、5年間で見込んでいた業績目標を1年半で達成することができました。このタイミングでGENDAグループにお声がけいただき、私たちだけでは果たせない、さらなる成長を実現できればと思い、参画を決断しました。

M&Aの成功はカルチャーフィットが9割

―GENDAがアレスカンパニーに感じた魅力は何だったのでしょうか?

申社長 スピード感を持って改革に取り組み、実際に成果も出されていたことですね。M&Aを検討する際、近接領域なら必ずシナジーはあると考えています。そして、その会社が当社と一緒になることでさらにお互いが成長するかどうかは重視しています。

―まだジョインして数ヵ月ですが、メリットを強く感じているとか。

大富社長 そうですね。例えば、これまではお客様から「筐体の相談はできないか?」と問われてもお応えできませんでしたが、GENDAのグループ企業の筐体チームと連携することで、すでに何件かご紹介ができています。また、アレスカンパニーは小さな会社ですので、経理や法務、労務などを私がすべて見るような形でした。今では、GENDAグループの質の高いコーポレート部門に任せられており、経営改善として即効性が高いと感じています。

―PMIは滞りなくできましたか?

申社長 問題なくできたと思います。いかがですか?

大富社長 M&A後も引き続き社長を継続していますが、おかげさまで順調です。特に私自身、GENDAのビジョンに共感できたのが大きかったと感じます。アレスカンパニーのカルチャーである「スピード重視」「小回りが効く」ことともフィットしていました。逆に言うと、M&Aは経営者や組織の価値観・世界観といったカルチャーが合わないと難しいのかもしれません。

―最後に、GENDAは今後どのような成功の道を歩んでいきたいかを教えてください。

申社長 M&Aは通常「非連続な成長」と言われます。しかし、私たちはアレスカンパニーのような良い会社と出会い続けて、「連続的な非連続成長」を成し遂げていきたいと思っています。その先に「世界一のエンタメ企業」になる道が続いていると信じていますから。リスクをとることを恐れずに、グループの皆さんとお客様にもプロセスまでも楽しんでいただきたいんです。それがGENDAの願いであり、最高の成功の形ですね。

申社長 「リスクを取らないことが、一番リスクにつながるんです。」

大富社長 「できるだけ早い段階で、社長になることを決めていました。」

(上写真)池袋にあるGiGO総本店は、e-sportsプロチーム「チームGiGO」の活動拠点としても使用

(下写真)秋葉原にはGiGOの店舗が4つあり、写真はGiGO 秋葉原3 号館


写真:富本 真之

文 :箱田 高樹