製薬会社の営業(MR)を経て、2023年に日本M&Aセンターに入社した調剤薬局支援部 猪口 華代さん。M&Aコンサルタントとしてのキャリアを歩み始め、「日本M&Aセンターで定年まで働きたい」と語る猪口さんに、M&Aコンサルタントとして働くうえでの自身の強みや印象的なお客様とのエピソードなどを聞きました。
―新卒からのキャリアを教えてください。
外資系の製薬会社2社を経て日本M&Aセンターに入社しました。新卒で製薬会社の営業(MR)を志したのは、父の病気と、不動産会社の営業として活躍していた母の姿の影響でした。
2011年に新卒入社し、初配属は東日本大震災直後の岩手県沿岸部。車を1台支給されて担当エリアの病院を回るのですが、地図上では存在するはずの場所に行っても建物が流されてしまっていたり、小さなプレハブで営業していたりする景色を目にしたのは人生観が変わる経験でした。
―日本M&Aセンターを選んだ理由は?
製薬業界全体としてMRが縮小傾向となる中、私も内勤部署に異動となり、思っていたキャリアが描けなくなって。そこで初めて、私は営業のワクワク感やプレッシャーが好きなのだと気付きました。営業としてのスキルをもっと磨き、自信を持って、お客様の人生を大きく変える提案をしたい。異業種で新しいチャレンジをしようと考えたとき、一番に浮かんだのがM&A業界でした。
とはいえM&Aは全くの未経験。「日本のM&Aの原点」である日本M&Aセンター以上に実績や信頼、ノウハウが蓄積されている会社はないと思い、この会社であれば胸を張ってお客様にご提案できると確信して入社しました。
―転職時の周囲からの反応はいかがでしたか。
「M&A業界=激務」というイメージがあるためか、女性でやっていけるのかと驚かれたのですが、むしろ今のほうが健康になったと感じています。
―意外です(笑)。それはなぜでしょうか。
M&Aコンサルタントという仕事は、お客様の人生をお預かりしていて、その責任は私にはあまりにも大きいんです。ふと時間ができると「あのお客様はお元気にされているだろうか」「そろそろお電話差し上げてみようかな」とお客様のことばかり考えていて。これこそ自分が突き詰めていきたい仕事だと心から思えたことで、キャリアの中で抱えていた違和感や不安が消えて、自分の将来についてうじうじ悩まなくなったんです。
それに、この会社では自分らしく振る舞えば振る舞うほど、どんどん成長軌道に乗っていけるような気がしていて。忙しくはありますが働き方に裁量権があり、自由にいられる環境だからこそ、心身ともに健康でいられるのだと感じます。
―入社後の働き方にギャップはありましたか。
それはありませんでしたが、想像以上に泥臭い仕事だと思いました。私が所属する調剤薬局支援部は自らお客様を開拓していくため、入社時のお客様の数は0からのスタートです。まずは新規のお客様や以前当社の社員が通っていたお客様への面談を申し込むお電話を1日30~60件ほどかけました。とにかく翌週のアポイントを埋めるのに必死で、移動の合間に公園やレンタル個室で架電していました。
そのときは無我夢中でしたが、振り返るとよくやっていたなとは思いますね(笑)。それができたのは、先輩の皆さんが口をそろえて「最初からきれいに仕事をしようとせず、泥臭い仕事にしっかり向き合って土台ができた人が、あとから伸びる」とおっしゃっていたからです。今の活動にもつながっていますし、このころの1本の電話から、社会人生活のすべてが報われるようなお客様との出会いもあったんです。
―どんなお客様だったのしょうか。
人口3千人ほどの町で、町の唯一の診療所の前にある薬局のオーナーでした。お電話口で「うちなんて譲り受けてくれるところがあるんですか…」とおっしゃられたのが印象的で、早速ご面談に伺いました。地域医療を守らなければという使命感のもと、経営でとても忙しくされていて、幼いお子様との時間が十分に取れない、過疎地でスタッフの採用ができないと多くの悩みを抱えていらっしゃった中、無事に上場企業へ譲渡することになりました。M&A後にはすぐにスタッフも派遣され、夫婦そろってお子様の卒園式に出席できたと教えてくださいました。
何よりうれしかったのが、成約式後にいただいたお言葉でした。「あなたからもらった電話1本が全ての始まりでした。きっとお電話を切られたり、すごく嫌なことを言われたりするかもしれない。けれども、我々のような家族がいることを信じて、これからも頑張ってください」と、何度も何度もお礼をしていただいたんです。前職も含めて社会人14年間で、これほどまでに一生忘れられない嬉しいお言葉をいただいたことはありませんでした。この言葉だけで、これまでの社会人生活で味わってきた挫折や、どうしようもない悔しさ、全てが報われたようで、一生懸命頑張ってきたことへのご褒美のように感じました。それと同時に、M&Aがいかにオーナーやその家族、従業員の人生や地域のあり方を変えるものであるかを実感し、背筋が伸びましたね。
―これまでのキャリアにおいて、営業としての強みをどのように見つけてきましたか。
それがなかなか分からず苦労しまして…。前職時代、どうやったら信頼してもらえるのかすごく悩んで、必死に勉強したりした時期もありました。そんな時、ある医師からの「あなたの日本語はきれいだから、薬は興味ないけど話を聞きたくなるね」という何気ない一言が頭から離れなくなったんです。
営業は口から出す言葉ですべてが決まりますし、言葉は一番大事な商売道具です。その経験から「美しい日本語」を意識するようになって、本をたくさん読んだり、アナウンサーの日本語を学んだり、言葉を自分の強みとして磨いていきました。
私は、営業と聞いて連想されるようないわゆるガツガツしたタイプでは決してないんです(笑)。逆に、感受性が豊かで繊細な性格が強みだと自覚しています。幼い頃から感受性が強く、今でも繊細さゆえに疲れてしまうこともあるのですが、仕事の武器にすると、人の表情やしぐさで大体その方が考えていることが分かり、お客様の懐に入ることに苦慮したことはあまりありません。お客様の言葉にならない要望や不安、心の葛藤に自然と寄り添えることが、一番の強みだと感じています。
―男女の違いを感じることはありますか。
男性と比べると体調の変化や体力面で差はありますが、それ以外ではむしろ女性こそこの仕事に求められているのではないかと思います。特に譲渡を検討しているお客様は「命」の次に大事な会社を第三者に託すことになるので、理屈だけではない様々な想いを抱えておられます。その気持ちや感情を機敏に感じ寄り添い、そして正しい道に穏やかに導いていくことこそ女性が得意とする計らいだと感じます。
―女性M&Aコンサルタントはまだ少数派ですが、どのように考えていらっしゃいますか。
数こそ少ないものの、当社では女性のM&Aコンサルタントと社長の対話の場を設けてくださるなどとても応援してくださっていると感じます。女性のモチベーションの上げ方、励まし方、指導の仕方もあると思うので、それは私たちからも発信していくべきだと思っています。当社は女性のコミュニティも充実していますので、入社を検討されている方がいらっしゃったら、安心して飛び込んできてほしいです!
―猪口さんは「定年まで日本M&Aセンターで働きたい」とおっしゃっているとお聞きしました。どんなところが好きですか。
私はこの会社が大好きなんですよ(笑)。みんな一生懸命ですし、いろいろなバックグラウンドを持った方がいてどの方とお話をしても新鮮です。「言われたことをやるタイプ」ではなく、自ら動き、感じ、工夫して実行するような経営者気質に近い方が多いのもとても刺激を受けます。
―今後の目標を教えてください。
当社で起こることはM&A業界の「革命」だと私は思っていて、当社営業初の女性グループリーダー、女性部長を目指していきたいですね。新卒採用イベントでお会いした方が、私との面談を機に入社してくれたのがとても嬉しくて。「猪口さんがいるからこの会社に入ろうと思った、管理職を目指そうと思った」と思っていただけるようなロールモデルになりたいです。
―最後に、リフレッシュ方法を教えてください。
暗闇の中でバイクを漕ぐFEELCYCLEに5年間通っています。爆音を聞きながらバイクを漕ぎ、滝汗をかくことで、毎週末体と心を整え翌週の活力を得ています。FEELCYCLEで出会った何千という音楽の中から、毎朝気持ちが上向く音楽を聴いて出勤するのも気分が上がって仕事への活力につながっています。私の体力の源はFEELCYCLEあってこそなので、社内でも布教活動をしています(笑)。
特技は書道で、決算期には社内の士気を高めるための掛け軸を書き、各所に飾っていただきました。日本M&Aセンターのバンクシーを目指します。
プロフィール
日本M&Aセンター ヘルスケアチャネル 調剤薬局支援部
猪口華代(いぐち・はなよ)
1989年生まれ、埼玉県出身、デンマーク育ち。法政大学人間環境学部卒。
新卒でデンマークの外資系製薬企業ノボノルディスクファーマに入社し、10年間MR(医薬情報担当者)として北海道、岩手県、東京都内の医療機関を担当。その後ジョンソンエンドジョンソン医薬品部門ヤンセンファーマを経て、2023年11月日本M&Aセンター入社。
現在は、ヘルスケアチャネル調剤薬局支援部に所属し、前職の経験と知見を活かし主に調剤薬局の譲渡企業を担当。趣味はFEELCYCLEと宝塚歌劇団鑑賞。特技は書道。