M&Aの初期段階で必ず行われる「案件化」。通常数十日かかる「案件化」を短縮することで、譲渡企業は相手探し(マッチング)のフェーズに早く進むことができます。
案件化スピード全社トップのコンサルタント戦略営業部 中部を率いる伊藤 泰之部長に、こだわりを聞きました。
―M&Aプロセスにおける案件化とは?
譲渡企業との提携仲介契約の後、提出いただいた決算書などの資料をもとに、企業評価を行い、リスクを洗い出し、譲渡企業の魅力を伝える資料(企業概要書)を作成することです。譲受け候補企業に譲渡企業のことを正確に伝え提案できる状態にするための重要なプロセスで、通常数十日かかります。
―なぜ時間がかかるのですか?
案件化を行うためには、譲渡企業から非常に多くの資料をご提出いただく必要があります。しかし「M&Aは秘密保持に始まり、秘密保持に終わる」と言われるとおり、譲渡企業オーナーは従業員には気づかれないよう資料を収集する必要があり、簡単なことではありません。
また、コンサルタントが丁寧にインタビューを行い、会社案内や決算書だけでは読み取れない譲渡企業の強みや成長ポテンシャル、従業員情報など、譲渡企業の強みやM&A検討に必要な情報を最大限引き出し可視化します。そのため案件化を短期間で行うには高度な技術や入念な事前準備が必要になります。
―コンサルタント戦略営業部 中部は早期案件化率が全社トップですね。
メンバーが頑張って案件化をしてくれているおかげです。会社としては60日で案件化を終わらせることを目標としていますが、当部では30日で完了させるようメンバーに発信していて、2024年度前期は平均案件化日数42日、中央値が37日、4割ほどは30日以内に案件化を完了させています。メンバー全員が早期案件化にこだわる状況ができています。
―「30日」にこだわるようになったきっかけはありますか。
単純に考えると、60日かかるはずだった案件化を30日にすることができれば、その分お客様が相手選びに使える期間が30日増えます。案件化日数を短縮して商談に余裕を持たせ、お客様がしっかり考え、悩み、ベストな決断ができる環境を整えたいと思っています。
案件化の主導権は常に当社であり、早期案件化は譲渡企業担当の責務です。この考えをメンバー1人1人に私から話し、なぜ案件化にこだわる必要があるのかをしっかり理解してもらうようにしています。
また、部の会議では成約した案件の案件化にかかった日数、マッチングにかかった日数、成約にかかった日数をデータで見せています。気づきを与えるだけで、自らで意識して取り組んでくれますね。
―伊藤さんは中部支社長でもあります。マネジメントで大切にしていることはありますか。
成約したら事例発表をしたり常にチームで情報交換をしたりすることは心がけています。また朝晩は会社にいるようにしていて、相談しやすい環境作りをしています。
「1人で何かを達成すること」もやりがいにつながると思うので、基本的には商談はメンバーに任せ、必要なときのみ同行するようにしています。試行錯誤しながらですが、会社が大事にしていることやお客様が大事にしていることを第一に考えながらも、メンバーが自立できるよう支援しています。
―伊藤さんのリフレッシュ方法を教えてください。
一番はお酒ですね(笑)。毎日自宅やお店のカウンターで飲んでいます。そこで1日の振り返りをしたり、YouTubeで動画を見たりするのが日課です。動画はM&Aとは関係のないニュースや時事ネタの動画を見ています。M&Aにいくら詳しくなっても、お客様と会話のキャッチボールができないと意味がないので、先輩から昔言われた「M&A馬鹿にはなるな」という言葉を胸にM&A以外の情報も仕入れるように心がけています。
―今後の目標をお願いします。
お客様のことを第一に考えてお役に立てるチームとして、1件1件のM&Aを大切に成約に導いていきたいです。
プロフィール
中部支社長 兼 コンサルタント戦略営業部 中部部長 伊藤 泰之さん
外資系企業に勤務後、2016年12月日本M&Aセンターへ入社。これまで50件以上の中小企業のM&Aに携わる。入社以来会計事務所と連携し、東海地域のM&A活性化に向け日々尽力している。2021年度はコンサルタントとして日本M&Aセンター最多M&A成約件数を受賞。2022年4月より部長職、そして2024年4月より中部支社長を務める。