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人事トップに聞く!日本M&AセンターのD&I推進に必要なこと

人事トップに聞く!日本M&AセンターのD&I推進に必要なこと

(写真左から)日本M&Aセンター 人事本部 人事部長 笹平 亜由子さん、取締役 人事本部長 武田 安央さん、人事本部 人材ファースト統括部長 中村 健太さん


日本M&Aセンターが経営戦略の柱のひとつとして推進するダイバーシティ&インクルージョン(D&I)。国際女性デーを機に、日本M&Aセンター 取締役 人事本部長 武田 安央さん、人事本部 人事部長 笹平 亜由子さん、人事本部 人材ファースト統括部長 中村 健太さんにお集まりいただき、D&I推進における当社の現状や、社員に持ってほしい意識などを聞きました。


合格点ではあるものの、まだまだ伸びしろも十分

ー日本M&AセンターのD&Iの浸透度について、ご自身が理想とする状態を「10」とすると、自己評価は何点でしょうか。

中村さん: 7点ぐらい付けていいと思います。私は新卒で入社して社歴が20年なのですが、10年前と比較すればずいぶんD&Iは社内に浸透しました。ダイバーシティの観点で考えると、もともと当社は中途採用者が多く、出身業界もさまざま。異なる価値観を持つ人材が集まる会社です。会社としてD&Iに焦点を当てて取り組んでいなかっただけであって、D&I施策に注力し始めたこの数年間で加速度的に浸透したと思います。

笹平さん:私は多様な人材が集まり、さらに一人一人が自由闊達にのびのびと働ける状態を理想としていて、そこから考えると5.5点といったところでしょうか。厳しめの点数ですが、それは(中村)健太さんが思う以上に、まだまだ伸びしろがあるという期待の意味もあります。

武田さん:ゴール設定や比較対象が難しいですが、国内のコンサルティング業という位置づけで考えると7点。十分合格ラインに達していると思います。
当社がD&Iを推進するにあたり、2022年より全社横断の女性活躍推進プロジェクトを立ち上げました。具体的な数値目標を設定し、日本M&Aセンターホールディングスでは2030年までに女性社員比率30%、女性管理職22%、女性役員30%の達成を掲げ、社をあげてより本格的に取り組んでいます。現在も、仲川 薫さんを中心に、女性活躍を中心テーマに据えながらも名称を「D&Iプロジェクト」に変えより広い観点からD&Iの推進に取り組んでいます。


女性活躍推進によって広がる全社員へのメリット

ー女性活躍を推進するうえでの当社の課題はどんなところでしょうか。

笹平さん:なんといっても女性社員の母数が圧倒的に少ないことですよね。日本M&AセンターのM&Aコンサルタント職でいえば、約600名のうち女性は44名とたった7%程度。とはいえ2021年は3名ほどでしたのでこれでも大幅に増えてきてはいます。まずは母数を増やしたうえで、活躍する素地を整え、レベルをどんどん引き上げていきたいと思っています。

中村さん:そうですね。ただ、母数は少ないながらも着実に育成はできていると感じています。例えば、入社3年未満のトップ層が集う「令和塾」には男女合わせて40名が参加していますが、そのうち8名が女性という回もありました。相対的に見ても、女性M&Aコンサルタントが実績をあげていて、社内で存在感を発揮し始めていると言っていいでしょう。このファクトは、採用活動に寄与する部分も大きく、女性求職者が抱きがちな「女性でもM&Aコンサルタントとして活躍できるのか」という不安を低減させることにもつながります。

武田さん:今後母数が増えればその中での多様性が生まれ、結婚・妊娠・出産などでライフステージが変化しながら活躍する実例も出てくるでしょうね。そこで出てきた課題に対しては、人事としてしっかり応えていきたいと思っています。

ー男性の活躍支援についてはどうお考えですか。

武田さん:誤解してほしくないのは、女性活躍を支援するというのは決して女性に下駄をはかせるという意味ではありません。指標のひとつとしてまずは女性活躍を掲げていますが、マイノリティに配慮することや、ライフステージの変化があっても活躍し続けるための環境を会社として整えていくことは、女性だけがメリットを享受するわけではなく、男性にとってもプラスの面が大きいものと考えます。

マイノリティであることを発しなくていい状態を作りたい

ーそもそもなぜ当社にD&Iが必要なのでしょうか。

笹平さん:私としてはD&I推進を通じて、マイノリティの立場にいる人がマイノリティであることを発しなくてすむ状態を作りたいと思っているんです。例えば「朝保育園に送ってから会社に行きます」というひとことをわざわざ言わなくてもよかったり、パパ育休に対しても心理的なハードルなく取れたりする状態にしたい。肩身の狭い思いをする人を減らし、すべての人がもう少しのびのび働ける環境を整えていくためにも、D&Iの推進は欠かせないものと考えています。

中村さん:あとは世の中の変化に対応できる会社になるためですよね。M&A業界はこの数年で大きなターニングポイントを迎えていますし、日本経済もものすごいスピードで変化し続けています。そんな中で、一様な組織だと大きな変化を受け止めきれないですからね。

笹平さん:そうですね。当社に入社した際に、「同質性」が非常に高い組織だと感じました。それは目標に向かって同じ方向を向いて進んでいったり、一体感を醸成したりするうえでは大きなメリットがある一方で、異分子や異なる価値観、変革への許容度が低いともいえるのではないかと思います。

武田さん:例えるなら、トップが「チューリップを植えるぞ!」と言えば一面チューリップ畑になるような感じですよね(笑)。それもいいけれど、いろんな花が咲いている花壇もきれいで、それもいいと感じられるのは大事なこと。先に健太さんもおっしゃっていましたが、多様なバックグラウンドを持った人材が集まる会社ではあるので、多様性は内包しているはずなのですが、そのあたりがもう少し表に出てくるとよいですね。

笹平さん:中途採用で多くの方にご入社いただいているので、他社での経験や知見を当社に持ち込んでいただき、それをさらに発信していただくことが同質性からの脱却のカギになるのではないかと感じています。

ーほかにD&Iを推進するうえでの「障壁」と感じるところはありますか。

中村さん:当社は、世の中にないビジネスモデルを作り上げてここまで大きくしてきた自負、成功体験がありますから、根底にある考え方、価値観を大きく変化させていくことには少々苦手意識があるかもしれないですね。

武田さん:日々の戦術はすごく柔軟ですし、チャレンジに対する許容度はすごく高いですよね。

中村さん:はい。私も根底に流れるものを決してネガティブに伝えたかったわけではなくて、根底から考え直すことをせずとも、日々さまざまなチャレンジをしていく中で自然発生的に多様な組織となり、新しい価値観が生まれ強くなることが十分できる会社だと思うんです。もう少し現場でアクセル踏み過ぎなぐらい踏んでいただいていいのではないかと思います。

違いはたし算ではなくかけ算になる

ー社員にはD&I推進にあたりどんな意識を持っていてほしいでしょうか。

武田さん:私自身が海外経験から得た心がけでもあるのですが、人と自分は違うということをまずは理解すること。そして、その違いを受け入れ、相互にリスペクトし合う状態まで持っていくことが大切だと思いますね。
当社においてはお客様に「最高のM&A」を届けたいという同じ目的に向かっていても、例えばM&Aコンサルタントとバックオフィスでは違う考え方や視点、大切にしたいことがあるわけです。それをしっかり理解して互いにリスペクトすることが会社の基本であり、D&Iの土台になると思います。

中村さん:さらに一歩進んで、その違いを強みにしてほしいと思っています。役割やバックグラウンド、年齢、性差、価値観の異なる社員がチームになることは、単純なたし算ではなくかけ算で考えていい。

一人一人がプロフェッショナルとして自律し活躍する会社へ

ー最後に、それぞれのお立場から今後力をいれていきたいことや社員へのメッセージをお願いします。

笹平さん:会社のカルチャーは一人一人が作り上げていくものです。ボトムアップでどんどん意見を寄せていただきたいですし、人事部としては皆さんを巻き込みながら次の施策を進めていきたいと思っています。

中村さん:採用活動においては一定のポリシーは持ちながら、できる限り出身業界、年齢などの幅を広げたいと思っています。入社後においても、もっと一人一人にフォーカスすればよりフィット感があるポジションを提供できると思いますので、育成から定着、さらに活躍までの仕組みづくりを強化していきたいと思います。

武田さん:私に課せられた大きなミッションは「プロを育てる」ことです。健太さんがおっしゃったとおり、採用から活躍までいいサイクルができると、現場に尊敬できる先輩たちがいて、その人たちが後輩を育てる。後輩は先輩を目指していい関係性が生まれていくと思います。多様な人材が集まり、さらに一人一人がプロフェッショナルとして自律し活躍することが、結果としてD&Iの推進にもつながっていきますので、引き続き人事の立場から尽力していきたいと思います。


プロフィール

取締役  人事本部長  武田 安央さん
1966年生まれ、東京都出身。早稲田大学卒。三菱商事に入社後、財務関連業務に従事。米国三菱商事会社、伯国三菱商事会社 Managing Director, CFO 兼 中南米統括付、 日本タタ・コンサルタンシー・サービシズ CAO 兼 CCO、三菱商事テクノス 取締役常務執行役員 コーポレート担当 兼 CCO などを歴任。2022年7月より日本M&Aセンター 上席執行役員 CCO 兼 コンプライアンス統括部長に就任。2024年6月より現職。

人事本部  人材ファースト統括部長  中村 健太さん
1981年生まれ、三重県出身。大阪大学卒。2005年4月に新卒1期生として日本M&Aセンターに入社。M&Aコンサルタントとして15年間で80件以上のM&Aに関与し、2020年4月に人材戦略部を立ち上げる。人材ファースト統括部長および営業開発部長として、社員の成長と会社の発展に注力する。

人事本部  人事部長  笹平 亜由子さん
1973年生まれ、東京都出身。中央大学卒。外資系ITコンサル会社等で人事領域全般を経験し、前職ではマーケティングリサーチ会社において人事本部長として人事業務全般を統括。現在は企業評価総合研究所の取締役を兼務し、社員の働きがい・働きやすさを追求しながら、当社の発展、業界の発展、そして社会の発展に寄与していくことに注力する。

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