
日本M&AセンターM&Aコンサルタントの新人層の選抜メンバーが参加する研修「令和塾」が、2月19日に名古屋市で開催されました。今回はスペシャルゲストとして”幻の手羽先”で人気の名古屋発祥の居酒屋チェーン「世界の山ちゃん」を展開する株式会社エスワイフード 代表取締役 山本 久美氏をお迎えし、事業承継のエピソードや伝統を守りながら変化を重ねる組織づくりについて講演いただきました。講演内容を特別にレポートします!
創業者である会長の逝去は、あまりにも突然だったといいます。後継者が定まっていないなか、会長の妻である山本代表は「これは私の運命なのかな」と受け止め、会社に入る決断をしました。背中を押したのは、長年お客様に向けて手書きで届けてきた店内のかわら版「てばさ記」。書き進めるうちに、自分が想像以上に店やお客様、会社のことを考えていたと気づき、夫の後を継ぎ、代表として一歩を踏み出す覚悟が固まったのです。

「世界の山ちゃん」をここまで押し上げたのは、幻の手羽先という看板商品、記憶に残るキャラクター「鳥男」、そして「世界の山ちゃん」「幻の手羽先」という強いネーミングの三点セットです。山本代表は「この3つのうち一つでも欠けていたら、今の山ちゃんはなかった」と語り、核を守りながらも「あぐらはかかない」姿勢を貫いてきました。事業承継の本質を「カリスマの再現」ではなく「組織が変化を楽しめる状態へ移行すること」だと捉え、日々の小さな実践を積み重ねていきます。
承継直後に山本代表が優先したのは、売上を上げることではなく足元を整えることでした。
山本代表は、水道光熱費や食材ロス、交際費、広告費、採用費など、見えづらい無駄を丁寧に洗い出し、「節約はそのまま利益になる」を全店舗の共通言語にしていきます。「堅実に利益を残す仕組み」を先に整えた結果として、売上は前年並みでも利益は改善し、組織の足腰が強くなっていきます。
同時に、「理念はトップダウンではなく、みんなで作る」方針を打ち出します。創業会長の言葉を整理しつつ、現代に必要なエッセンスを加え、社員・幹部・店長・アルバイトまで巻き込んで再編集。全員が携帯できるクレドカードに落とし込み、朝礼や教育で繰り返し使うことで、作って満足せず、理念を日常の判断基準に変えていきました。社是は「立派な変人たれ—立派な人間になる/明るく元気に“ちょっと変”」。山本代表は「作って終わり、が一番危ない。全員の“日常語”にするところまでやるのが仕事」と語ります。

二年目以降は、創業者から受け継いだ良き伝統を守りながら、山本代表の視点で小さな変化を積み重ねます。たとえば、女性客や若い世代の声からデザートを強化し、本格的なスイーツを提供するようになりました。さらに、預かり型のキッズルームを設置し、ママ会で「子ども抜きで少しだけ話せる時間」をつくる取り組みを始めます。短時間でもリフレッシュできる場があることで、来店体験が豊かになり、同時に未来のお客様である子どもたちにとって「初めての居酒屋が山ちゃんだった」という体験につながる、長期的な種まきにもなっています。
山本代表は、自らを「石橋を叩きすぎて壊すタイプ」と評しながらも、ひとたび決めたら後ろを振り返らない姿勢を徹底します。骨折や紛失といった日常のトラブルも、「ここで気づけて良かった」「右手が使えるから大丈夫」と言い換え、前向きに捉えるのが流儀です。失敗しても、再チャレンジできる構えを会社に埋め込みたい」と語るように、失敗を責めずに学びへ変える文化が、変化を続けるための下支えになっています。
現在は、山本代表がブランディング・広報・人材育成を担い、若い世代の社長が経営を牽引する体制で、社内の窓口は社長に一本化されています。必要な場面で従業員と社長の“カンフル剤”として補完的な役割を担いながら、組織が自律的に動けるように支えています。
山本代表は、最後に「伝統は守る。でも変わり続ける。それを“普通”にできたら、100年企業は遠くないと思います」と結びます。幻の手羽先という核を守り、日々の小さな変化を楽しむ。その積み重ねこそが、事業承継を“過去の再現”から“未来の創造”へと変えていくのだと感じさせてくれます。
今回の令和塾には日本M&AセンターのM&Aコンサルタント約65名が参加しました。令和塾の後は世界の山ちゃんに移動して会食を実施!情報交換を通じて親交を深めました。

=令和塾とは=
日本M&Aセンターは「企業の存続と発展に貢献する」という理念を実現するために「人材育成」が最重要だと考え、経営者とひざを突き合わせ伴走できる人材を育成すべく、入社3年未満の優秀コンサルタントのみが参加可能な「令和塾」を毎月開催しています。経営層、幹部層とのビジョンの共有や、外部経営者による講演を通じ、高い視座の習得を目指しています。





