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成果が空気を変える 日本M&AセンターのD&I推進の現在地とこれから・仲川薫さん

成果が空気を変える 日本M&AセンターのD&I推進の現在地とこれから・仲川薫さん

日本M&Aセンターで唯一の女性取締役として経営の最前線に立ちながら、D&I推進の旗振り役を担う仲川 薫さん。「第二創業」を迎え新たな価値創出が求められる中、D&Iを成長のための戦略と捉える理由と、これからの日本M&Aセンターに必要な多様性のあり方について聞きました。


D&I推進は「第二創業」を迎えた当社の成長戦略

―日本M&Aセンターにとって、D&I推進はどのような意味を持つと考えていますか。

当社は2026年に創業35周年を迎えます。成長に向けた新たなチャレンジが求められる第二創業期において、私はD&Iの推進は“必要だからやる施策”というより、会社の成長にとって不可欠な戦略だと考えています。新しいビジネスモデルをつくっていくうえで、同質的な視点だけでは突破口が生まれません。異なるバックグラウンドや価値観を持つメンバーが集まり、視点の衝突と統合を繰り返すことが、第二創業には欠かせないからです。また、M&Aコンサルタントに求められる「お客様に寄り添う力」は、机上で得られるものではありません。日頃から多様な考え方や働き方に触れ、それを自分ごととして体感するほど、相手に向き合う力は磨かれていきます。

―当社におけるD&Iの現状をどのように捉えていますか。

当社には、もともと幅広い職種・経験・価値観をもつ人材が集まっています。ただ、多様であれば「誰でも受け入れればよい」というわけではなく、そこに会社として大切にしている価値観やカルチャーへの共感が必要です。価値観があまりに異なると、本人も組織も苦しくなりますから。その前提がそろったうえでの多様性は会社にとって“強み”になります。
私が入社した3年前にはすでにD&Iを推進する社内プロジェクトは存在しており、イベントやアンケートなどの取り組みも積極的に展開されていました。ですが、それらが成果にどうつながっているのかが見えにくい状況でした。そこで、女性比率などの数値目標を明確にし、経営アジェンダに格上げしたことで、社内の動きが大きく変わりました。目標を握り、経営層が継続的に向き合うことで、現場の優先順位がそろい、具体的な変化が生まれ始めました。

女性M&Aコンサルタントの「定着」から「活躍」支援へ

―特に課題と捉えていたのはどこでしたか。

D&Iは女性活躍に限った話ではありませんが、当社にとって最もインパクトが大きいテーマは、本業であるM&Aコンサルタントの領域で女性が活躍できる環境をつくること。ここが変わらないと、組織は本質的に変わらないと思っています。
私が入社したころは、女性のM&Aコンサルタントは数えるほどで、せっかく入社しても定着が難しく、活躍という段階にまでなかなか届かない状況でした。現在では、女性のM&Aコンサルタントの人数が数年前の約10倍規模に増え、表彰や主要指標にも女性の名前が自然に挙がるようになりました。経営層からも「(女性も)できる」との声が聞こえるようになり、組織の“空気”が変わってきたと感じています。これは本当に大きな変化です。

―どのような取り組みが奏功したのでしょうか。

取り組みの柱は三つあります。一つ目は、母集団の拡大です。女性M&Aコンサルタントの採用人数が増えると定着する人数も増え、横のつながりもできます。そこでの経験の蓄積が組織全体の底上げにつながったのだと思います。二つ目は、育成支援の強化です。女性M&Aコンサルタントを集め、特別にプレゼンテーションなどの研修会を開き、スキルを磨く機会を設けました。三つ目は、社長をはじめ役員との定期的な対話の機会の設定です。営業手法にとどまらず、日常的な困りごと、例えば「外回りのヒールがつらい」など現場のリアルな悩みにも耳を傾けて改善を重ね、挑戦しやすい状態を整えました。
ただ、推進には現実的な難しさもあります。忙しい現場を巻き込みながら機会をつくること、支援が必ずしも意図した通りに届かないこと、優先順位の調整など、簡単なことではありません。それでも続けていくことが大切で、次第に活躍者が出てくることで「私もやってみよう」という気持ちが周囲に広がっていくと信じています。
私自身も女性社員と積極的にコミュニケーションを図り、定期的に個別面談の時間を作っています。仕事から離れて、一緒にゴルフをすることもあります。活躍を後押しするのはもちろん、経営陣と現場との距離を縮める一助になれればと思っています。

D&Iが「会社の成長を押し上げるもの」として理解されるために

―D&I推進の難しさや障壁はどこにあると感じていますか。

いちばん難しいのは、社内で「D&Iが本質的に必要だ」という認識をどれだけ共有できているかという点です。全員が深く理解する必要はありませんが、最初に本気で学び、動き、成果を出すv少数の推進者は必要だと思っています。その想いが伝わっていき、結果として広がるのが理想的な順序です。

―そのためにはどのような働きかけが必要なのでしょうか。

私は次の三つの組み合わせを大切にしています。それは、私は次の三つの組み合わせを大切にしています。それは、コンセプト(当社にとってのD&Iの意味を明確にすること)×成功事例×伝え方(誰にどう届けるか)です。この三つが揃うと、組織は動きやすくなります。せっかく入社いただいたからには、性別問わずすべての社員に活躍してほしいですし、そのための場を整えていきたいという想いが根底にあります。それが成果につながれば、D&Iは単なる“良い取り組み”ではなく、会社の成長を押し上げるものとして理解されるようになります。
最近では男性育休の取得も進んでいますが、不在に備えるための業務整理など、運用面の課題も出てきています。これもD&Iの一部で、性別に関わらず、ライフイベントとの両立が自然にできる会社は強いと思います。
また、心理的な面にも目を向ける必要があります。少数派である状況はどうしても負担が大きくなりますし、非公式なコミュニケーションに情報が偏ることもあります。これを解消するには、ある程度母数を増やしていくということも欠かせません。心理的安全性は“数の問題”でもあるという感覚は、改めて大切にしたいところです。

目指すのはプロフェッショナルのダイバーシティ

―今後どのようなD&Iの姿を目指していますか。

ひとつの目標は、各階層で女性比率を半分に近づけていくことです。M&Aコンサルタントではまず女性比率3割を目指し、その先に女性のマネジメント層や役員を安定的に生み出していきたいと思っています。ここが整うと、より幅広い多様性が自然に機能し始めます。

そのうえで、D&Iの核心は“制度を増やすこと”ではありません。大切なのは、一人ひとりの社会貢献と自己成長が最大化される、最適な働き方を一緒に設計していくことだと思います。職種ごとに必要なスキルや働き方は異なりますし、価値観やライフステージもさまざまです。それぞれのプロフェッショナルとしての最適解を個別に考え、マネジメントには一定の裁量を持ってもらいながら、恣意性を抑える仕組みで支える。そんな“自律分散”に近いD&Iを目指したいと思っています。あらゆる多様性に目を向け、誰もが「自分のベストなパフォーマンスの出し方」を見つけられる環境は、会社の成長と、お客様への価値提供の質を同時に高めていくはずです。

日本M&Aセンターでは、2026年3月にD&I(ダイバーシティ&インクルージョン)推進の取り組みや社員インタビューをまとめた冊子「DIVERSITY & INCLUSION BOOK 2025-2026」を公開しました。以下よりご覧いただけます!

DIVERSITY & INCLUSION BOOK 2025-2026


仲川 薫 
取締役 上席執行役員 兼 マーケティング本部長
茨城県出身。慶應義塾大学卒業。
大学卒業後、イードを経てリクルートに入社。2013年にはリクルートジョブズ ・リクルートキャリア執行役員就任。その後、タウンワークやフロムエー・ナビ等求人広告領域において、事業成長をけん引し、No.1ブランドの地位を確立。その経験を活かし、リクルート全社のサービスのブランド・マーケティング戦略を推進した。
2023年に日本M&Aセンター入社。CBOとしてブランディングや日本M&Aセンターのユニークネスを世界へ発信する取り組みや、業界全体のオープンイノベーションを推進している。